朝はもうすぐ

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 身体を起こそうとした拍子に頭がひどく痛んでそのままもといた場所にそろりと戻る。  オレは新谷と二人で飲んでいたはずだ。  新谷の初彼(高校時代)話で盛り上がり名前を覚えられない甘いお酒をたくさん飲んだ。 「なんでって、昭介が『迎えにきてー』って電話したからだろ」 「えぇ、う、うそ……ご、めん」  喋ると喉が痛い。  酔っぱらって電話した、と言うことか。オレはきりきり痛む頭を抱えた。  なにやってんのオレ……  酔いが吹き飛び意識がはっきりしてくると、胃に強いむかつきを感じ始めた。  友人の歩く振動が頭に響いて、飲み過ぎたんだなと情けなく思う。  反省しているとオレをおぶって歩く大きな身体が震えた。そしてくすくすと笑い声が聞こえた。 「……なに?」 「いや、……本当は俺が電話したの。したら新谷が昭介が酔いつぶれたから引き取りに来いって。昭介、俺が店に着いたときで一瞬起きたけどなあ」 「……ごめ、ん、」  二杯目までは覚えている、けれどその後どれだけ飲んだのか全く覚えてない。 「いいよ、大丈夫かなと思って電話したから」  友人は夜中に呼び出され、男を一人おんぶしてるのに機嫌のよい声をしている。
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