朝はもうすぐ

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 力が入らなくて友人が一歩進むたびずるずる身体が落ちていく。  よいしょと友人はオレをおぶり直した。  勢いつけて上に跳ねたその振動で気持ちの悪さが倍増した。 「おもいよね、あるくから……」 「もうちょっとだからいいよ。すっごい重いけど」 「うっ、悪い」  けらけらと友人は笑う。  久しぶりにこんなに楽しそうな友人を見た。  身体が上がったから友人の顔がすぐ近くになってしまった。  胸がドキドキする。 「何時かな?」 「今、一時かな、もう二時になるかな」 「ほんと、ごめ、ん」 「んー、もういいって、ほら着いたぞー」  いよいよ掠れ声が出せなくなってきた。目だけ上げると友人のぼろアパートが視界の端に見えた。  ああ、もう終わりかと思う。  こんなに近付くなんて、いくら仲が良くてもそうそうない事だ。
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