朝はもうすぐ

79/102
前へ
/151ページ
次へ
 玄関前で友人はオレをゆっくり下ろした。  おぶわれてるのとは大違いだ、もう立ってるだけで精一杯。  身体にかかる重力と血液が全部足に集中しているみたいでピクリとも動かせない。  頭の中身は立ち止まっているのにゆっくりと回っているし、視界は昔の白黒映画のように映ったと思ったら消えてまた映る。  まばたきをしていないのにまばたきしているみたいだ。  ダウンのポケットに手を突っ込んで「こっちだったかな」と呟いた友人は左右探ったあとジーンズのポケットから鍵を見つけ出した。 「おおあった」  開錠し玄関扉を開け友人は部屋に入る。  続きたいけど、オレの足は全然動いてくれない。  どうしよう  友人は靴を脱いで先に入ってしまった。  扉もゆっくり閉まる。  あ…と思ったけど声も出なかった。  小さく一歩足を前に出す。  その動きで目の前がぐらりと揺れてオレは座り込んだ。  気持ち悪い。頭、痛い。身体が重い。吐きそう。
/151ページ

最初のコメントを投稿しよう!

854人が本棚に入れています
本棚に追加