朝はもうすぐ

80/102
前へ
/151ページ
次へ
 玄関ドアが開いて友人が焦ったようにオレの前にしゃがみ込んだ。 「おい、大丈夫か?」 「……ダメ、」  ちゃんと声が出なくて空気だけでそう言った。  聞こえないと思った声は友人にちゃんと届いたようで「ちょっと頑張れ」とオレの手を握り部屋に引き込んだ。  ぐんと引っ張られて身体も頭も大きく揺れ、限界を感じた俺はトイレに駆け込んだ。  もどしてしまえばむかつきは驚くほど綺麗に消え、ずいぶん楽になった。  しかし動きで起こる頭のぐらぐらは無くなってはいなかった。  トイレのドアに掴まり何度も深呼吸する。  ゆっくりゆっくりドアを開けると目の前の洗面台に友人がもたれかかり待っていた。 「飲みすぎだな、」  小さく頷いて友人を見ると、仕方ないなあと言うように目尻が下がっている。  吐息がアルコール臭くてまた酔いそうだ。  気持ち悪くて洗面台に近付き気が付いた。
/151ページ

最初のコメントを投稿しよう!

854人が本棚に入れています
本棚に追加