朝はもうすぐ

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 あの日、告白の日からここに来ることはあっても、泊まっていない。  歯ブラシはあの時、投げ捨てたんだった。 「どうした? 具合悪いか?」  すぐ横に立っている友人に歯ブラシを指さし「ない」と口パクで伝えた。 「ああ、ちょっと待って、ここに予備があるから」    しゃがんだ友人が洗面台下の物入れを開けて中から予備の歯ブラシを出した。  包みをはがしてオレに手渡す。 「……すみません」  声にならない声で礼を言うと友人はうっすら笑ってオレの頭をぽんぽんと叩いた。  俺が歯磨きを始めると友人は和室に入って行った。何度磨いても酒臭い。  いっそ気道を塞いでしまいたい。 「君、いつまでやってるつもり?」 「……お酒くさいから」  口パクでそう言って、身振り手振りで酒臭いのが嫌だと伝えたら友人はいやそうな顔をして「飲むからだろうが」と吐き捨てた。  膨れていると腕組みして洗濯機に寄りかかっていた友人が深くため息をついた。
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