朝はもうすぐ

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「ちょっと待ってろ。着替えて、ああ風呂湧いていてるけど……入らないほうがいい」  友人はそう言いながら和室に戻りダウンを持ってあっという間に出て行ってしまった。  どこに行くのかも聞けなかった。  どうしよう、むかむかは消えたけれど酒臭いし、なんだか全身煙草臭い。  友人は入らない方がいいと言ったけれど、オレは服を脱ぎ捨て髪と身体を振動を最小限に抑え洗った。湯船に浸かる頃には吐息の酒臭さ以外はフルーティないい香りに変わっていた。  気持ちがいいなあ、なんて思っていると風呂のドアが開いた。 「風呂入るなって言っただろうが」  開けたのは大好きな友人でオレを睨みそう言ったかと思うと閉めてどっかに行ってしまった。  一瞬の出来事だったが、風呂を開けられたのは初めてだった。  すごく動揺しているんだけれどあんまりのんびりしているとまた怒られそうなので極力早く、でもたぶんいつもより五分の一程のスピードで立ち上がった。
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