朝はもうすぐ

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 少し冷たく感じたのは、オレの顔が熱いせいかな。  撫でるように動く手を振り解くように身体を壁に向けた。 「……今日は本当にごめんね、ありがとう。もう寝るね」  身体の下に引いていた掛布団を被って丸くなる。  布団の向こうから「ああ」と聞こえた。  ここで寝るのはもうこれで最後になる。  新谷くんと落ち合う前、バイト先に寄ってシフトを変えてもらった。  もともと夕方希望で最初のシフトはそうだったんだけど、三か月も経たない頃夜勤の人間が辞めたので代打で夜、入ることになった。  友人の家に泊まる理由になるからそのままにしていたのを元に戻してほしいと交渉したところ、夕方勤務の学生が急に辞めたとかですぐに代えてもらえた。  次のシフトから、夕方だ。  これで最後か、そう思うとほっとしながら寂しさも感じる。  この肌触り、匂い、もう少し堪能したかったのに、睡魔はすぐにオレを取り込んだ。
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