朝はもうすぐ

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「あれ? どうしたの?」 「……今からなんか用事ある?」  怒っても笑ってもいない、真顔の友人は抑揚のない声で聞く。   「え?いやないけど…なに?」 「飯食いいこう」 「……え、」  返事をする前に友人は歩き出した。オレも慌てて後を歩く。 「黄龍亭でいいか?」  しばらく無言で歩いていた友人がちらっとオレを見た。   「あ、うん」  ここは大学徒歩圏内なので学生向けの定食屋や安い居酒屋が数多く立ち並ぶ。  友人が言ったのはそんな店の一つなのだが質より量の店とは違い安いうえに味もいい。  ただ汚い。そのせいでカップル客はほとんどいない、と言うより見たことがない。  ここは餃子が絶品で、オレの大好物だ。  店の前に列はない。  ホッとしたのもつかの間、店内には待ちが三人いた。 「違うとこ行くか?」 「ううん、もうお腹が餃子モードになっちゃってるもん」
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