朝はもうすぐ

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  小声で訪ねた友人はふにゃりと笑った。  十分ほどで席が空き、二人で三人前は平らげた。餃子にラーメン、炒飯まで。  友人は普段二人前は軽く食べるのに今日はちょっと控えめで、オレは久々の大好物に食欲倍増でいつもよりちょっと食べた。 「う、身体が重たい」  小汚い暖簾をくぐってパンと張ったお腹をさする。  夜風は冷たいけれど食後なのであんまり寒く感じない。 「今日良く食ったなあ」 「うん、食べ過ぎた」  友人が踏み出した先には友人宅がある。そしてオレは電車なので逆方向。  二、三歩進んでようやく友人は立ち止まってるオレに気が付いた。 「どうした」 「うん、電車こっちだから、じゃあね」 「泊まっていけばいいだろ」 「……いや、」  まだそうすると決めていないのに、友人はさっさと歩き始めた。  こういう時、友人は何を言っても譲らない。背を向けて歩き出したという事はもう話しを聞く気がないという事だ。  黙って後ろを歩きながら、もしかして友人はオレが告白したことを忘れてしまったんじゃないかなと思った。友達だもんと確かに言ったけれど。  気を使われるのも辛いと思うけれど、こう普通に夜誘われるのはそれはそれで辛い。  少しでも、友人の中で引っかかりがあれば泊まりには誘わない気がする。  自分が友人ならばきっと誘わない、この間の酔いつぶれた時はまあしょうがなかったにしても。
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