854人が本棚に入れています
本棚に追加
友人はでかい身体をぴんと伸ばして歩く。
足がオレより長いんだから、ちょっとは遠慮して歩けばいいものをすいすい歩くからこっちは早足になる、大変だ。
友人の背中の向こうに続く車道の先に、夜空が見える。小さい星が一つ、二つ、三つ。
ああ、冬の夜空は綺麗だなあと思っていると、とんと目の前に友人の肩があった。
その距離約10センチ。
「わ」
足を止めると、なんとかぶつからずに済んだ。友人がオレの横に並ぶ。歩き始めると友人も並んだ。
あれ、もしかして合わせてくれているのかな?ちらりとどんな顔してるか窺ってみたけれど、暗くて分からない。
ちょっと前に出て見てみる。
友人は至って普通、笑いも怒りも曇りの表情もない。
「なんだよ、ぶつかるぞ」
「ん? いや別に」
つい笑ってしまったオレを見て友人は困ったような顔をしてふっと笑った。
黄龍亭の前は大きめの道路だけどすぐ隣の脇道に入ったので今は静かな住宅街の中を歩いている。
車もなく、人もいない。友人は喋る気がない……というかもともとそうお喋りなタイプではないので話が無ければいつも黙っている、いまもそう。
オレも苦にならないから二人してひたすら歩く。
最初のコメントを投稿しよう!