朝はもうすぐ

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 慌てて後を追いかけるけれど、歩くあいだも友人のあの表情が気になって仕方がない。  そういえば今日の友人はビデオ屋の前で会った時からなんかおかしい。  もう一歩で腹を立てていると表現できるような感じ。なんだか雰囲気が硬い。  話すこともなくただ並んで歩きながらオレはその理由を考える。  ここ一か月近くで自分たちは大きく変わった。  自分の意志ではなかったけれど、なるようになったんだと思う。  考えた通りの着地点だった。予想外だったのは友人が強く友達関係の継続を望んだことだ。  気持ち悪いとか、生理的に受け付けないとか、そんな感じの理由できっと会ってもらえなくなるんだろうと思っていたから。  なるべく昔と変わらないようにしたいと思っている、でもどうしても無理なことがある。  例えばこうやって泊まり、とか。  察してほしい、でも無理してもこうやって着いて行く。友達だから。  オレ、頑張ってる。  友達でいたいっていう、友人の意を最大限汲んでいるつもりだ。  だからむかつかれたり、腹立てられたりする理由は無いと思う。  大体好きになった時点でオレから見た友人は友達じゃなくて好きな人なんだもん。  もし完璧に元通り、と望まれたら今度はちゃんと言おう。出来ないものは、出来ない。  今度こそ嫌われるだろうか。好かれることはなくても」、嫌われるよりいいと思うのは悪あがきかな。  小さく息をつく。吐息は白い靄になって暗闇に消える。  どうしたい、どうしてあげたい?  自分と友人を天秤にかけても平行にしかならない。  ゆっくり歩く隣の友人は今何を考えているかなと思う。
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