朝はもうすぐ

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「じゃあ風呂どうぞ」 「あ……えっと……」  友人はタンスから以前オレが使っていたパジャマを出してきて押し付けた。  両肩を握られグルんと向きを変えられるとそのまま風呂場へ押しやられて自分はさっさと和室へ消えた。  しばらく洗濯機の前でぼうっとして、深くため息をつく。  ゆっくり風呂に浸かって上がると和室はもう暖かくなっていた。 「こっちでドライヤーかけていい?」 「いいよ」  硝子戸の脇で髪を揺らす。温風が気持ちいい。  ものの一分でブレーカーが落ちた。 「あ」 「あ、ごめん、ここダメなんだね」  真っ暗になった和室から出て、台所の配電盤の前に立った。  台所は明るいから落ちた箇所は分かるんだけどあとちょっと手が届かない。  あともうちょっとなんだけどなあ、  指先をピンと伸ばし膝で反動をつけて飛び上がったのだけれど掠っただけだった。  諦めて椅子を持ってこようと振り返ったら真後ろに友人が来ていた。   「惜しいね」  真ん前の友人が手を伸ばす。  身体がぶつかりそうになって、慌てて横にずれた。身体が触れた訳でもないのに顔がかっと熱くなる。  背だけじゃなくてリーチも違うんだと改めて思う。  伸ばした腕が楽々とブレーカーのつまみを押し上げた。
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