朝はもうすぐ

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 友人はさっさと和室に戻り、オレは飛び跳ねた心臓の余波が去るまでその場で何度か深呼吸した。  部屋に戻るとエアコンが消えていてテレビが消えていた。 「昭介こっち」  ドライヤーを左手、煙草を右手と両手塞がった友人に言われたまま顎で指されたベッド横の床に座る。  タバコをもみ消した友人はドライヤーのスイッチを入れた。  ベッドに腰掛けた友人が後ろから優しく髪を触る。  頭に熱風を受けながらなんで、と思う。  どうしたんだろう、こういう事初めてだ。  髪をすく、指が動くたびに背筋がぞくぞくする。すごく嫌だ。 「もういいよ、あと自分でするし。和也も入ってきたら?」  強引にドライヤーを取り上げた。  気軽に触らないでほしい、そう思うから早口になってしまった。 「ああ、うん」  俯いたオレの耳にベッドから立ち上がり床を踏む音から硝子戸を開ける音、閉める音、一連の流れが届く。
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