朝はもうすぐ

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 コンビニを通り過ぎ駅に向かう道沿いが少しづつ賑やかになってくる。  鼻がむずむずして大きく「くしゅん」とくしゃみが出た。  背筋が悪寒で縮む。風邪かもしれない。  寒さがきつくて目の前のカフェに入った。  店内に客はまばらだ。  ホットカフェオレを注文して店の一番奥の席に座る。  湯気の上がるカップを持ちふっと息を吹きかける。一口飲むと身体がほわっと身体が温かくなる。  冷えてた指先もカップで温かくなった。  ホッとしている。  いま、心底ホッとしている。  こうして温まって初めて、自分は逃げたかったのかなあと思う。  人として逃げるのはどうかって思いはするけれどもうどうでもいい、いつかは過去になる。  新谷も言っていた、次だ。  次の事だけ考えよう、前だけ見よう。  今はそれを許してもらおう。  スマホがブンブンと震える音がする。  これを見てしまったら、また苦しくなる。  気が付かないことにする。  止まっては震えるスマホに胸が痛む。  でも自分には友達は無理だ、今は……  ごめんなさいを繰り返し心で唱え、バックを胸にぎゅっと抱きしめた。  何度繰り返したか分からない、でももう諦めてくれたようだ。  息をついてカップを取り上げるともうそれは冷たくなっていた。
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