朝はもうすぐ

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 もうちょっと温まりたくてカウンターに向かう。カフェオレを注文してふと外を見る。  暗い中に雪が舞う。  道理で寒いはずだ。  暖かい店内から出たくなくてレジ横に置いてあった雑誌を一つ選びカフェオレとそれを持ち席に戻った。  年中無休、二十四時間営業のここに入って正解だった、朝までいた方がいいかもしれない。  長期滞在を決めたオレはゆっくりと雑誌をめくる。  一番奥、出入り口を背にして座っている。  雪が降るって知ってたら窓側にしてもよかったなあと思いながらスティックシュガーを二本入れてマドラーでくるくる混ぜる。  目は雑誌のセーターにくぎ付けだ。  これ欲しい。  ざっくりゆったりなデザインで自分の手持ちにはない。  一つあってもいいなと思う。 「もう混ざってる」  頭の上から聞こえた声に身体がビクンと跳ねた。  聞きなれた、友人の声だ。 「なにしてんの」  硬直して息するのを忘れていた。  前に座る音がしても顔があげられない。 「なにしてんの」  イラついた声に固唾を飲む。 「コ、コーヒーを、」 「それは見ればわかる」  友人が黙るとしんと静まる。周囲の物音も店内のBGMもすごく遠くに感じる。  
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