朝はもうすぐ

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「い、家に帰ろうと思って」 「なんで?」  友人の不機嫌な声が頭の上から降ってくる。 「ごめん」 「なんで謝るの?」 「……もう無理」  声が震える。  白旗を上げる自分が悔しいやら情けないやら上げさせた友人がむかつくやらなんやらで頭がまたぐちゃぐちゃになる。 「バイト、時間変えたの俺に会いたくないからか?」 「……そうだよ」  さっきまでカフェオレで潤っていた喉がからからに渇いて声が上擦る。   「今は会いたくない、顔、見たくない、」  言ってしまって、酷い言いようだなと胃が強烈に痛くなる。自分が悪いのは分かっている。好きになってしまったから。感情をコントロール出来ない自分が情けないけれど、本当にどうしようもない。 「俺、嫌か?」  何とも答えようがない。ただ俯く俺に友人のため息が聞こえる。  「そうやって離れていくつもりなら、昭介のいいようでいい」  いいようで、とは離れたいなら離れろという事かなと思う。  開かれたままの雑誌の上を視線が滑る。  唇をぐっと噛んだ。自分で望んだくせに、離れていいと言われると少し悲しくなる。 「付き合っていい」 「は?」  予想外の言葉に顔を上げた。  ここに来て初めて見た友人は眉根を寄せた難しい顔をしている。
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