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違和感を消し去りたい固めに繰り返された頭突きが、壁の亀裂を広げていき、ついには壁を崩壊させた。 このままでは竜が闘技室から出てしまう。 「やばい!」 慌てて教官は観客席を飛び降りて、竜を捕獲しようとしたが、教官が着地する頃には、既に竜は壁に空いた穴を通り抜け、闘技室から外へ出ていた。 竜を檻に入れ直す役割を任せられているハンターが室内にやって来たが、これまた一歩遅かった。 「逃がすか!」 カインは疾風の如く猛スピードで竜を追いかけていった。 カイン以外の二班の学生達は、呆然として竜を追いかけるカインを見送っていた。 「・・・・・・。」 破壊された壁を見て、教官は腕を組む。 少し古ぼけた校舎だったが、闘技室は用途が用途なので、定期的に修繕している。 そのため壁が脆くなっていたとは考えにくい。 竜の潜在能力を甘く見ていたことは認めるしかない。 「急いで竜を処分しろ。」 女教官補佐とハンターは引き締まった声で「「はい」」と返答しつつ、闘技室から出ていった。 ――あっちは確か、寮だったな。 二班のメガネ男子は、寮で待機中の学生達を案じた。 寮では今頃、カインの兄が授業を終えて寮に帰っているはずだった。 ――カインの本気、見れるかも知れないな。大惨事にならなきゃいいが……
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