Chapter1 蜜姫零

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彼女はさっきの闘いで、口の中を切ったのかもしれない。 キスはもっと爽やかなレモン味を想像していたが、最悪なものになってしまった。 きっと苦い思い出としておれの脳から永遠に抹消されることはないだろう。 彼女は口の中の唾液を「ズズッ……」と音を立てて全部吸い尽くそうとする。 本当に最悪だ。 仕上げに蛇のような舌使いで唇を舐めまわし、名残惜しそうに離れる。 キスは終ったが、おれと彼女の唇の間には、運命の赤い糸のように粘性の唾液で繋がれる。 それを見て彼女は「フフッ」と満足げな声をもらす。 「気が済んだか?」 返ってくる答えはわかっていたが、尋ねてみる。
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