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どきどきとする胸の鼓動を感じながら、思わず伏せていた顔を恐る恐る上げる。
するとそこにこよみの姿は無く、慌ててきょろきょろ辺りを見回すと……こよみは鼻をつまみながら精一杯に背伸びをして、僕と同じように金木犀の枝に手を伸ばしていた。
そして何とか短く先端だけを手にすると、湯気が出そうなくらいに真っ赤な顔で、それを僕につき出してくる。
「……あんたにあげる」
「こよみ……これって」
「い、言わなくてもわかるでしょ!? わ、私も……初恋なんだから」
そうやってモジモジと恥ずかしそうに目を逸らすこよみが愛しすぎて、僕は思わずその細い身体を抱き締める。
最初は強ばっていた身体はやがて、トクントクンという心地よい心音と共に、緩やかに弛緩していく。
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