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自分が最後に覚えていた記憶はあまりに曖昧だけど何故か一部分は、はっきりと覚えていた
そしてそれは酷いものだった
建物はひどく荒れ果て半分以上は半壊、周りから聞こえてくるのは、
悲鳴、絶叫、痛々しい叫び声、狂ったように甲高い笑い声、子供は困ったように泣きじゃくる、
そして自分の周りにあったのがすべてが"人だった"肉の塊、それを踏
み分けてくる女性を見て、心のなかに張り詰めていた不安が取り除かれ、安堵していた。
「あれ……姉ちゃん?」
自分は女性に向かって囁いた
「……どう…し…て…こ…こ…に……居る…の…?」
「なんでだろうね、お姉ちゃんも分からないや」
そんなの嘘に決まっている、だって目の前に居る女性は泣きそうな顔をぐっと堪えながら、自分に話しかけてきた
今自分はもうすぐに死ぬって分かっている、そんな自分を看取りに来たのだろう。
その女性は自分の体をそっと優しく抱きしめてきた。
その抱きしめられている時間がずっと続けばいいのにと、心の底から思っていた。けれども、そんな時間が続くわけもなく、
――いきなり、自分を抱きしめていた女性の力がだんだん抜けていく、目の前の女性の方に目を向けるとその女性の首から上が無くなっていた。
自分の唯一の肉親、その女性の死の迎え方があまりにも呆気なさ過ぎて、気づいて、自分の姉を殺したやつを殺そうと、振り向きざまに自分も殺されていた。
俺を殺したやつは嘲笑い、風のように立ち去っていく。
掠り薄れ、消えてゆく意識の中、色々思い残しながら死んでゆく
―――ああくそっ、あんなクズ野郎を殺せなかったんだよ……くそっ
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