最低な男

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「えぇっ!? ここに独り暮らしなの!? だって、ここ分譲でしょ?」 「いや、別に俺が買った訳じゃないすよ。親が買ってくれたから住んでるってだけで」 玄関ドアを開けた坂井が、中へどうぞという顔で振り返るから、私は「お邪魔します」と若干身を縮めてそこを潜った。 先ず目に入ったのは、ホールに壁掛けされた大きな絵画。色彩豊富に描かれたぐにゃぐにゃの波のような絵画にどれだけの値打ちがあるのか分からないけれど――。 もしかして何百万円もするような絵だったりして……。 ――と、それを見た瞬間、迷わずに高価なものだと決めつけた自分がいた。 何故なら、このマンション……。 構えからして普通じゃない感は漂っていたけれど。一歩足を踏み入れれば、中には託児所やカフェ、レストラン、更にはバーまでが備わっているんだから、そんじょそこらのサラリーマンには手の届かないマンション……だと思う。
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