02:異変はすぐそばに

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 むかっっ…!  なんだとこのプログラマー詐欺!! 言うに事欠いて、私が一年間コツコツ上げてきたレベルに、二日三日で追いついてやるだと…!?  そりゃあ、お金つぎ込めばできるでしょうね!でも私、そういうのダイッキライ!!  私だってね、私だってね、 課金すれば、もっともっと強くなれるんだから! アンタなんかに、負けない!  私はミルクを飲み干して空になったコップをシンクの中に荒々しく置くと、それと同時にひとつの決心をした。  私の持ってるケータイはお父さん名義のもので、一切の制限がかけられてない。えっちな同人誌だって読めるのよ。読まないけどね。  いわゆるペアなんちゃらコントロールとかもかかってないから、その気にさえなれば普通に課金もできる。えっちな動画だって見れるのよ。見ないけどね!  ただ、問題は。 毎月のご利用明細書に、お母さんから鬼のように厳しいチェックが入るってこと。ゲームに課金なんてしたら一発でバレる。  だったら…、  だったらもう、選択肢はひとつしかないわよね! 「ただいま。なによ姫子、もう起きてたの?ずいぶん早いわね」  その時ちょうどタイミングよく、パンパンに膨れ上がった買い物袋を片手に、母さんが勝手口から戻ってきた。 「母さんこそ。なに、出掛けてたの?こんな朝っぱらから?」 「毎週日曜日恒例、新鮮市場の“ザ・早起きは三文の得”早朝タイムセールよ。タマゴワンパックがね、十円も安いの」  母さんは満足げに笑って、買ってきたそのタマゴをまるで宝物か何かのように丁重に冷蔵庫へとしまう。 私はその背中を見つめながら、所在なく本音を呟いた。 「ふぅん…。べつに十円ぐらいならいいじゃん。なにもこんなに早起きしなくたって」 「バカ言わないで姫子。十円よ!?十円も違うのよ!?一円でも二円でも、他より安いところがあるならそこに買いにいく。それが母さんの仕事なんだから!」
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