1・その声に

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「みーちゃん。このケーキ、とてもとても好きだ ろ?」 放課後の図書室。向かい側に座った百瀬が私に意 見を求める。 今日は部活が休みで、いつもわたしのそれに合わせて 帰りを待っててくれるから、たまにはお礼として 百瀬の都合に付き合うよと提案したのに、わたしたち は何故か図書室にいて。 ……これじゃ、待たせてるいつもと一緒じゃない。 と、私は思うのに、百瀬はとても楽しそうで。 そして、何故かケーキのレシピ本を開いては、頷きながらページをめくってる。 今、百瀬が指差しながら開いているページはガ トーショコラ。チョコをたっぷりと使った、ぎっしりと詰まった印象がお腹を刺激する。ふわりとしたケーキよりも好みのそれは、悔しいけどとても美味しそう。 「――うん。そこそこ、ドンピシャ」 「あ、やっぱり?」 「そっ、そこそこだからねっ!」 なんとなく、全てを肯定するのは憚られて。 静かな図書室の空気が、なんだか居心地を不安定 にさせる――なんて感じるのは、わたしが曖昧すぎるからかもしれない。
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