全ての終わり、全ての始まり

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
2011年 12月25日 東京都内 某ビル最上階 「この夜景も、人の繁栄も笑顔も矛盾と犠牲の元に成り立っているのか……。」黒衣の男の視線の先にはクリスマスに湧く幻想の光に彩られ、笑顔溢れる東京の街並が広がっている。「そうよ、どんな幻想に包まれていようとそれが真実…。悲しいけど……それが現実よ。」男の背後から黒髪の女性が答える。背は高め、凜とした顔つきにショートカットが良く似合う美人。不釣り合いなのは背中にライフル、腰に拳銃が装備してあり男と同じく黒衣を纏っている事だけである。男が振り変える。が、顔は見えない、代わりに黒い三つ眼の鬼の面が女を見返す。黒革のロングコート、腰には日本刀。女に近付き髪を撫でる。「これであちらの世界には戻れない……お前はまだ代償を払えば戻れる。良いのか…?」「罪を犯した者は戻れないわ、代償を払っても法が許しても国が許しても誰に許されてもこの罪は消えない。ましてや人を殺めてしまった罪はね。それに私は私の意志でここにいる、戻る気は無いわ。」「そうか…。」「私の罪はあなたが一番良く知ってるでしょう…?戻れる様な罪でも無い事も。」「わかった。最後まで付き合ってくれ。モトコ。」「ボス、準備が出来ました。各地設置完了。妨害を受けた報告等ありません。」部下らしい者が巨大なアタッシュケースを運んで来た。男が開ける。中にはPCと起爆装置らしきモノ。「皆に繋いでくれ。」部下が無線を繋ぎ、男に渡す。「皆待たせな。これで終わる、そして始まる。全ては泡沫に帰し、崩れ去る。不条理のない、平等で公正な日本の誕生のために。まだこれは始まりにすぎない。矛盾だらけの日本そしてヒトを変える起爆剤を作るために皆私に力を貸してくれ!」応える声はない。だがこの声を聞き頬を緩ませた者は日本中にいるだろう。それはPCに入ってくるメールの数、内容が物語っている。男が懐から起爆キーを取り出す。皆の視線がキーに集中する。無機質な金属音が響き、キーが差し込まれる。「楔は投げられた…。」 カチャリ…その音は某ビル 最上階の一室の中ではほんの小さな音だったが、その外東京、日本、歴史にこれまでに無い大きな爆音と衝撃をもたらした。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!