イントロダクション

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「井上、井上、起きろ。オイ。」………だめだ。起きやがんねぇ。ったく……しゃあねえな、連れてくか…家に。まあ…ボトル7本も飲めば当然か。「すぅ…すぅ…んっ…」…随分艶っぽいな……イカン!「タクシー!」 俺の家は港の倉庫街にある。まあ実際、倉庫丸々一棟借りたから当然なんだけどな。相変わらず殺風景だ。最低限の家具とベット。車。ベットに井上を寝かせ、毛布を掛けてやる。暖房を入れ、弾倉に弾を込め、サイレンサーを装着し外に出る。 夜の港は黒い風が吹き荒ぶ……街灯の明りの中に黒いロングコートの男が一人立っている。俺は隣りに行き、煙草に火を点けた。「…礼を言いに来た…」男は言った。顔には三つ眼の鬼の面……だがその声はかつて一緒に現場を駆け抜けた親友の声だ…。「やっぱり生きてたか……八神…。」「自衛隊車両を襲った奴等はこちらでも手に余っていてな……いずれ細切れにするつもりだったが、手間が省けた…礼を言う」抑揚の無い冷静な声。相変わらずだ。「首謀者はお前か?何故はこんなコトをした?」「…………内閣に付き合うのは疲れた…自分の意思で戦いたい…俺の中の正義が叫んだ…国を壊せと…」「これじゃ大量虐殺だろ。」「人の命は軽い…一瞬で消える。命の価値は軽さは俺達が一番知ってるだろ…。」「……………だが!お前は間違ってる!」八神がこちらを見返す。「《間違う》《法に違反する》《罪と罰》か…ヒトの都合で作った法や道徳観に縛られる気はない」振り向き、歩き出す。「なあ速水…俺達は《ヒト》なのか…?」「……………。」八神は歩きながら語る。「俺達はヒトの《規格外》だ。お前もこちらに来い。そっちはお前の世界じゃないんだよ、わかってるだろ?」八神の言葉一つ一つが心に刺さる。親友としての言葉、戦友として言葉、同じ《規格外》としての言葉。だが俺はそれを敵の言葉として受け止めた。「八神…言いたいのはそれだけかよ?」煙草を捨て、ホルスターからベレッタを取り出す…。「話を聞くだけのつもりだったが…気が変わった。逮捕する…生死を問わずな。」八神も獲物を抜く…「やはり同じ者同士だな…俺も気が変わった。」
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