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セウーは出汁をこよなく愛している。
それはもう、一に出汁、二に出汁、三四も五も六も七も八も出汁出汁出汁出汁…。
頭の中は出汁いっぱいである。
セウーは元々あまり喋らないタイプだが、出汁好きになってからはさらに喋らなくなった。
そんな彼の悩みは…あまりにも出汁に関する事に反応してしまう事である。「出汁…」という単語が聞こえると、セウーは条件反射でそちらへと顔を向けてしまう。「~だしぃ」と話し言葉でも反応してしまう。コンブやシイタケ、カツオブシ、黒蜜国料理…。
そんな言葉に反応しながら、毎度毎度ぬか喜びだ。
今日もぬかよろ…と思ったら今日は違った。
「…黒蜜国」
ハッキリと聞こえて条件反射で顔を向けると、その先にはヒュースがいた。ヒュースが話しているのはヴァルナーだ。ハッと我に返ったセウーがいたのは…魔法国深海州の旧・王宮。現在は州知事の職場として使われている場所だ。その州知事の使う執務室であった。
「…セウー、聞いてたか?」
ヒュースから急に振られてセウーは焦った。ヒュースとヴァルナーを交互に見る。どちらもセウーの言葉を待っている。
しかし、セウーは話を全く聞いていなかったのだった。
どう答えようか悩んでいると…ヒュースが気づいたようでため息をつかれた。
「お前…また別の事考えていたな」
お見通しのようだ。
「…すまない」
「いや、気持ちは分かる。俺もシオと会った頃はその事で頭がいっぱいになったからな。あ、もちろん今もだけどな!!シオちゃーん!!」
ヒュースが目をハートの形にして上空に向かって叫んだ。
………ん?
何か勘違いしていないか?
その予感は的中していた。
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