それぞれの夏(雪)

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晶ちゃん達との『バチャバチャ』漫遊記から数日後。 『♪~♪~♪』 「ん?」 自宅でコーヒーを飲んで過ごしていた僕の傍らのガラケー(雪専用)からメール着信の音楽が鳴る。 「学かな…それとも凛ちゃん?」 ガラケーのメルアドを知っているのは小舘学と小舘凛ちゃんだけ… あ、いやカノ・キノちゃんにも教えたか。でも僕の中での予想は『学』一択だった。だって受信したメールの9割は学からだったし…。そう当たりをつけつつ、二つ折りのガラケーを開き、ボタンを押すと 「あ やっぱり学・・・ と 凛ちゃんも!?」 メールは2件入っていて、おそらく同じタイミングで受信したようだった。申し合わせたのか、はたまた姉弟ゆえのシンクロなのか…。 「とりま、凛ちゃんから…」 順番としては凛ちゃんの方が先にメッセージを受信していた事もあり、そちらを先に開いてみることにした。  『雪ちゃんお久しぶり(((o(*゚▽゚*)o)))元気?こっちはみんな元気だよ(*´▽`*)みんなでまた遊びたいね~って話になってたよ(*^▽^*)』 「うんうん、GW以来だもんね」 GWに3人と飲み会をして3か月ほどだが、ずいぶん経った気がする。 文章はまだ続いており、十字キー下をポチポチ推し進める。  『あのね、急にメールしたのは、ちょっと確認したくて』 「うんうん」 なんだろう改まって 僕はおもむろにコーヒーをズズっとすすり、十字キー下を押すと  『雪ちゃん、ユーチューブに水着で出てないよね?』 「ぶふーーーーーーー!!!がはっ げへっ!」 すすったコーヒーが口から勢いよく吹き出し、ガラケーはおろか、衣服や机にも飛散する。通常ならコーヒーの処理をするところだが、内容が内容だけにそれどころではない。 「み 水着って もしかして…」 かろうじて、ガラケーについたコーヒーを拭い、ガラケーの画面を再度見ると、メールには添付ファイルがあり恐る恐る開いてみると 「ぎぃやぁぁぁぁぁぁ!!!」 僕は絶叫を抑えることができなかった。ファイルの中身はPC画面のスクショで、まごうことなく照れながら水着を隠そうと(実際隠れていない)している『雪』の写真に他ならなかった。 「うぁぁぁ(*ノωノ) 凛ちゃんがまさか見てるとわ…」 キノちゃんのユーチューブは僕も見てみたが、どちらかと言えばダンス好きとかギャル系(死語)ウケしそうな配信内容だったし、まさか2次元好きの凛ちゃんが閲覧したのは意外だった。それでも、見た事実に変わりはない。問題は 「ど どうする… 認めるか、シラをきるか…」 シラをきったあとにキノちゃんの配信停止を頼む、という方法もあるが、この時点では録画なんかいくらでもしているだろうし…うーん まぁ、一度きりの誤爆スキャンダルだし、嘘をつかず正直に言うか…うん、そうしよう。 凛ちゃんへは包み隠さず、恥ずかしながら自分である事と、どーかどーか仲間(詩織さんとちーちゃん)以外はナイショにしてくださぃぃ、と文章を入れて送信した。 「はぅぅぅ」 メールを送り終えると再び送られた水着写真が脳裏にフラッシュバックする。平常心を保つためとムセたことで、喉がイガイガした僕はあらためてコーヒーをすする。 (そういえば 学からもメールきてたんだったな…) 凛ちゃんへ返信する事に全集中して頭がいっぱいだったから忘れてた。布団に放り投げていたガラケーを再び手に取り、未開封の学のメールを開くと 『雪さん!もしかしてキノ國YA!(キノちゃんのサイト名)に出てませんでしたか?』 「ぶっふぉぉぉーーーーーーー!!!」 僕は立て続けに2回目のコーヒー噴霧をすることとなり、さらに学からの『会心の褒め殺しスレッド』により、その日一日を羞恥心に苛まされることとなった。
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