それぞれの夏(雪)

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『ジャバジャバ』珍道中から数日の事。 「あぢぃぃぃーーー」 僕はアパートの床でタンクトップとパンツのだらしない格好でのたうち回っていた。あ、ちなみに『晴』です、悪しからず。 異常気象なのか、北海道でもここ数年は猛暑日となる日が多くなり、今日も今日とて窓を全開にしても風が入らず、都会と変わらない蒸し暑さが部屋の中に充満していた。ちなみにアパート設備にはファンヒーター暖房はあっても、エアコンはない。まさか北海道ではいらないとタカをくくっていたのが裏目に出て、我が家は扇風機すら置いていない現状だ。 「車さえあればなぁ…」 車で颯爽とドライブにでも行けば、涼を求めることもできるだろうに…。 そう出来ないのには理由があって、実は車を修理に出していて、手元にない。 それというのも、先日の『ジャバジャバ』の帰り、一夏の絶叫マシーンなみのドライビングに、家に着くまで生きた心地がしなかったが、なんとかアパート前に到着することができた。ただ最後に電柱にぶつけるというおまけ付きで…。 損害は大したことはないのだが、車屋さんに少しだけ入院することになった。 こういう時こそ冷房の効いたファミレスで働ければいいのに、今週いっぱいは改装中で、そして『REMOC←』も明日は『雪』の日だから休み。週間天気予報だと明日も猛暑日らしく、まる2日はこの暑さと闘わなければならない。 「明日なんか窓も開けられないから干からびちゃうよ…」 『雪』の時は居留守を決め込まなきゃいけないから、当然窓が開いていると不自然であるため、締め切ったままにしなければならない。 「そういえば・・・ 晶ちゃんはどうしてるんだろ?」 ふと、この状況を隣の晶ちゃんはどう過ごしているのか心配になった。もしかしたら僕以上に干からびている可能性だってあるが、その考えと同時に 「もし晶ちゃん家にクーラー、もしくは扇風機でもあれば…」 通例だと『雪』の日は晶ちゃん宅に避難する事になっているが、夏休みに入ってから晶ちゃんと連絡もしていないし顔すら合わせていない。晶ちゃんちにクーラーや扇風機がある保証もないが、もしあれば渡りに船だ。ただ、居るのかどうかは分からない。 僕はスマホを取り出し、存命かどうかを確かめる事も含め、晶ちゃんへメールを送った。 『晶ちゃん元気?暑くて干からびてない?』 とりあえず晶ちゃんの安否を確認して、その後 明日の都合を聞いて、返事が追い風ならさらに自分の主旨を伝えていこうと考えた。 送信してからしばらくなるが、今だ晶ちゃんからの返事はない。 『ジーワ ジーワ ジーワ・・・』 開けた窓から聞こえるセミの鳴き声が暑さに拍車をかけ、不快指数をみるみる上げていくのが分かる。僕は下敷きを団扇の代わりにして、あおいでいたところ 『リンリンリン♪』 「キタ━(゚∀゚)━!」 着信を告げるベルの音が鳴る。相手は待ち望んでいた晶ちゃんからの返事だった。 『キノ カノ と遊びなぅ』 晶ちゃんの返事は相変わらず端的であるも、『キノ カノ』とは先日メイクでお世話になった造型師の姉妹の事だとすぐに分かった。文面からして遊びというくらいなのだから、自宅にはいないのだろう。 『元気ならいいんだ。ごめんね楽しんでるところ』 晶ちゃんへそう返信し、送られたのを確認しスマホをベッドに放り投げた。 「はぁぁぁぁ がまんするしかないかぁぁぁ」 僕の目論見は潰えてしまったが、こればかりはしょうがない。明日はなるべく水分を取って動かないようにしよう。夜になればあっという間に涼しくはなるし…
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