それぞれの夏(雪)

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僕らは最初に屋内プールの王道ともいえる流れるプールから遊びに興じた。そのまま泳ぐことはもちろんだが、プールサイドに建てられたブースには多種多様な浮き輪の貸し出しもしていた。僕は後でも借りれると思い、キノちゃんとともにそのまま泳ぎ、晶ちゃんとカノちゃんはボートタイプの浮き輪に乗って、流れに身を任せて流れるプールを一周することにした。 泳いでいくうちに流れるプールは右へ左へカーブしたあとトンネルがあり、僕らは流れのまま内部へと侵入する。 「おお~ すごーい」 トンネルの内部はちょっとしたプラネタリウム風になっており、天井には星に見立てたイルミネーションがちりばめられ、泳ぐ人を飽きさせない凝った作りになっていた。トンネル内はプール槽はところどころにスポットライトが当てられて潜れば明るいのだが、基本トンネルなので、中は薄暗くなっていて、不逞な男だったら、ここでいかがわしい事を考えそうだな…とふと考えていたところ 「ひゃぁぁっ!!」 突然泳いでいる僕のお尻の部分を誰かがサワサワした。 「え!? え!? なに にぎゃゃあっ!!」 パニックになっているところへ、太ももへのさらなるサワサワ攻撃が襲いかかり、しっぽを踏まれた猫の叫び声みたいな声を上げる。たまらず僕は元凶のもとを突き止めるため、スポットライトで照らされた水中へ潜る。すると 『あ!』 水中にいたサワサワの犯人はさっきまでボートに乗っていた晶ちゃんだった。目が合った晶ちゃんは右手をこめかみに首を傾げ 『(∀`*ゞ)テヘッ』 とジェスチャーでもわかるいたずらっ子の振る舞いをする。 「も”ぉ”ぉ”ぉ”!」 僕は水中にも関わらず、口から気泡を上げながら、このいたずら坊主(娘)に仕返しせねばとつかみかかろうとしたが、息が続かずいったん水面上へ戻る。 「ぷはっっっ ・・・ あ あれ?」 さっきまで近くを泳いでいたキノちゃんとカノちゃんが消え、ボートだけがプカプカと浮かんでいた。 「ど どこに いっ  ちゃぁぁぁぁ!!!」 居なくなった二人の所在を声を出しながら周囲を見回したとたんに、またお尻へのサワサワ攻撃が始まり、どこぞのへっぽこ中国拳法使いみたいな声を上げてしまった。 「あ 晶ちゃん やめ ひゃぁっ」 サワサワの犯人が晶ちゃんかと思い、向けていたお尻側に身体を反転させて防衛体制をとったところ、いるはずのない背後から再度お尻と脇腹を揉みしだく手が現れ 「え!? な なん んにゃぁぁぁぁぁ!」 とっさにお尻と腰の攻撃を防ぐために両手を後ろに回した途端、今度は正面から胸をモミモミされ、もう訳が分からず、身体をグルグル回したり、両手を胸・お腹・お尻と交互に防壁をあてていたところ 『ザバァッ!』 水中から水柱が3本出たかと思うと、晶ちゃん・カノ・キノちゃんが僕の前に姿を現す。おおよそ見当はついていたが、犯人はこの3人だ。 「もぉぉぉ! ひどいよぉ!」  「(∀`*ゞ)テヘッ ハナヂ(・´ i i `・)ブー♡」  「雪ちゃんのお尻やわらか~い」  「お胸 おっきくなった?」 三者三様、人の身体を触りまくったうえに、思い思いに所感を述べていく。痴漢された憤りの中で、悔しいかな最後の晶ちゃんの言葉に『え ホント!?』と喜んでしまった自分が悲しかった。 ここでフツーの女子なら、『お返しだぁ!』とか言いながら3人の胸やらお尻やらを触り返して、キャッキャウフフするのが女子会の定番なのだが、当然僕にその甲斐性はない。 そんな僕がとるべき方法は一つ 「逃げろぉぉぉ」 僕は勢いよく水面に潜ると、水流を追い風(水)?のごとく利用し、人魚のように足だけをバタつかせて3人のもとから離れていく。  「あ~ 待て待て~」  「カノ 水吸い込んでジェット噴射」  「(''◇'')ゞ ( ゚д゚)ハッ! ヽ(`Д´)ノデキルカー!」 その後も流れるプールで一通り泳いだり、浮き輪でプカプカ浮いたりして遊んだあと  「次は アレ行きましょう!」 「げげっ」  「ウチ 雪ちゃんと いく」  「あぅ カノ 雪ちゃんと…」 エントランスホールから見て見ぬフリをしていたけど、やっぱり行くことになるよね、そりゃ… 僕の唯一の鬼門、ウォータースライダーへ…
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