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とりあえずあのままでは埒があかないとかなんとかで、
葵と夏音は街まで下りる。
葵に付いて行くか行かないかを戸惑っていたが、今ここで葵に付いて行かないと今度こそ森の中でどうなっていたかわからないので、付いて行く事にした。
街には街灯もなく、地面もアスファルトではなく、土。
建物も映画村や日光江戸村のセットの様な木造。
やはり此処は1864年で幕末なのだろうと認めざるおえない。
そう考えると、自分はタイムスリップというやつをしたのだなぁ…と漠然とだが思い、歩く足が徐々に止まっていく。
夏音の様子がおかしい事に気付いた葵は振り向き、話しかける。
「どうした?暗い顔をして。」
「え?あー…いや…」
歯切れの悪い返事に葵は手を伸ばし夏音の頭の上におく。
「……な、によ、これ…」
「何って…頭を撫でているのだが…」
それがどうした?と言いたげな顔を見ながら視線をそらす。
「…あんたは「葵」」
急に遮られた。
「何よ?」
「あんたとかではなく俺の名は葵だ。」
何が言いたいのだろう?
改めて言わなくてもさっきお互い名乗ったではないか。
「さっき聞いたけど…」
「だから葵と呼べ」
「……………はい?」
「葵と呼べと言っている」
「な、何で?」
別にあんたでもいいではないか。
人をどう呼ぼうが人の勝手じゃないか。
「俺も夏音と呼ぶ」
「……はい?」
「嫌なのか?」
「い、嫌じゃないけど…」
友達(女)にしか呼び捨てで呼ばれたことない夏音にとって異性に呼び捨てで呼ばれるのは何か照れくさい。
「て、てか、なんで頭撫でるのよ?」
この際、呼び捨てとかどうでもいい。
何故頭を撫でられるのかわからない。
「何故って…夏音が寂しそうな顔をしていたから」
「……そんな顔してた?」
していたつもりはない。
ただ、やっぱりここは幕末で、私はこの世界で一人きりだなぁ…とか元の時代に帰れるのかなぁとか考えていただけ。
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