魔法使いが一人では足りない

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「どんなに価値あっても売れなきゃ意味がないんだよね。昔のセンセーショナルなアーティストは死んでから、認められる事が多いって知ってる?」 「えっと、ゴッホとか? あと晩年があまりよくない人も多いって聞いたことがあります」 一ノ瀬さんは、驚いたように目を見開いた。 「それ、だれから聞いたの」 「お母さんです。私のお母さんの子どもの頃の夢って絵本作家になることでしたから。今もたまに仕事で、絵を描くことはあるみたいですけど」 「ふうん、意外だな。SEASONSの社長にそんな過去があったとはね。まあ、ここまで言ったらわかるかな?」 「えっと、写真を売るために売名でまず役者になったって事ですか?」 一ノ瀬さんはにっこりと笑った。その笑顔はナツコさんの言う通り、イケメンそのものだった。 「ご名答! 人気絶頂でいきなり引退宣言、カメラマンになるなんて言ったもんだから、最初の写真集、ありえないくらい売れた。仕事もバンバンきたしね」 「でも、それだけじゃ続かないですよね?」 「ほのかって結構するどいね。そう。売れるだけじゃだめ。一発屋で終了するからね。 でも、あれを見た、理解できる人間の評価が良ければ話は別。あれから俺はしたくない仕事は一つも引き受けてないし、自分から言ったやりたい事は全部やらせてもらってる」 この人凄くカッコいい人だなって思った。こんな人の時間を借りてるんだ私。 .
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