呪文のない魔法

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ドアを叩く音を聞いて、いっちゃんは私をしゃがませた。自分もしゃがんだ。 「お前、仕事これだけじゃないだろ? あと何回歩く?」 私が、ブランド名を幾つか告げるといっちゃんは、驚いた。 「全部サンドラが見に行く物ばかりだな。ほのか、お前頑張ったんだな」 鼻の奥が勝手にツンとする。泣いてるヒマなんてない。涙を力いっぱいの笑顔で追い出す。 「優秀な魔法使いが13人もいたからね」 「とりあえず、これが今俺が持ってる携帯。なくした事にするから、これ持ってろ。俺は先に出ていくから、お前はあっちに隠れてろ」 いっちゃんがソファーの陰を指差したので私はそっちへ向かおうとすると。腕を掴まれた。 「会いたかった。忘れてたはずなのに、会いたかった」 その、語尾と大きくなった、ノック音が重なって、いっちゃんは私の腕を放した。 .
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