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「これって……」
いっちゃんの携帯は、着信履歴は沢山あるのに発信履歴はゼロ件だった。
英語で綴られているメールも、タイトルはRe:がつくものばかり。
わたしはナツコさんが、時間をかけて丁寧にしてくれた、作品と言ってもいい化粧がぐしゃぐしゃになるのを止める事が出来なかった。
涙が止まらない。
一体いっちゃんはどんな生活をしていたの?
こんなさみしい携帯電話を持って。
大きく深呼吸をしてから、クラッチバッグを開いて、いっちゃんの携帯電話をしまって、今度は自分の携帯電話を出して電話をかけた。
「あ、ナツコさん。今どこ? ちょっと大変な事になっちゃって」
私は転んだ時にひっかけて、裂けてしまったシルクの裾の話をナツコさんに話して電話を切った。
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