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「そんな事言ったら、ナツコさんなんて、会った事ないのに、ジャンに名前知られてたじゃない」
「ああ。昔、私がした仕事が印象に残ってたらしいわ。でもそのお陰で、特別に本番でも、ほのかのメイクをさせてもらえたけど」
私は他のモデル達の自分への視線も気になったけど、ナツコさんはもっとすごかった。
職人級のメイキャップアーティスト達に総スカンを喰らいながら、観察され続けて、パレットからある色を一刷毛とったら、手首まで掴まれてた。
「NON!!」
「うるさいわね! 黙って見てなさいよ!」
ナツコさんは日本語でそう言って、掴まれた腕を振り払った。
ナツコさんがその一刷毛を私の瞼に置いた瞬間、ナツコさんの手首を掴んだ人だけじゃなく、その場にいた、誰もが静かになった。
そして、一番若いメイキャップアーティストが拍手をした。
拍手は増え続けて、メイクが終わる頃には、ナツコさんの周りには人だかりと、沢山の質問で、埋め尽くされていた。
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