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いっちゃんは、白くて冷たい大理石の上で仰向けになっていて、微動だにしない。
こういう時って、どうするの? フランスの救急車の呼び方。私知らない。
とりあえず、生きてるかどうか確認しないと。
そう思って、私はいっちゃんの側に行って、の左胸に耳を当てた。
とくん。とくん。
心臓の音が聞こえる。よかった。死んでないみたい。
いっちゃんの温度を感じて、胸が熱くなった。
あ。息もしてるみたい。
気を失ってるだけなのかな。
気をうしなって……。
あ。そっか。今なら、少なくとも頭痛は起きないはずなんだよね?
私はものすごく後ろめたい気持ちになった。自分が気を失わせた張本人なのに、この状況で、いっちゃんにキスしようとしてるなんて。
――こんなロマンティックさのかけらもない運命があってたまるか――
なんて、思ってた私が、自らアンチロマンティックなキスをしようとしてるんだから。
でも。ためらっている暇はない。
私はいっちゃんの息遣いが聞こえるほどいっちゃんの頬に自分の頬を寄せてから、
そっと、いっちゃんの唇を奪った。
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