呪文のない魔法

5/20
前へ
/20ページ
次へ
息ができない。息がしたいのかも分からなくなりそう。 そう思い始めた頃に唇が離れたので、私は閉じていたまぶたをそっと開いて、いっちゃんの目を見た。 「馬鹿!!!」 いっちゃんの第一声はそれで。私はあっけにとられた。 「いっちゃん? 私の事分かる?」 「わかる。ああ。あんなに手間かけて、頭痛にまで耐えたのになんでこんな事が」 いっちゃんは、それだけ呟いて何故だか私にキスをした。 いっちゃんからのキス。 それはいっちゃんが完全に私を思い出したと言う事だ。 涙が溢れる。 「ほのか」 たった三文字の私の名前。 呼ばれてこんなに嬉しかった事、いままでにないし、これから先もきっとない。 .
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

171人が本棚に入れています
本棚に追加