36 文学と剣術

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木刀ではなく竹刀を使っているとはいえ、またたくまに出き上がっていく伸びた隊士の山。 打たれては立ち上がり、投げられては立ち上がる、ということができるのはごく一部で、大体は一度でノックアウトされ再起不能に陥いる。 戦力外とでも言うべき隊士が壁際に転がっていくのに反比例して、強者が残っていった。 蔓は今、永倉と藤堂、それに松川、島田の4人に囲まれていた。 このレベルになると、蔓としてもそう簡単には動けなくなる。 チラリと横目で土方を見た。 土方は原田を含む隊士5人と相手をしていた。 一応竹刀を持てはいるが殴る蹴るなんでもありの、剣術とは程遠いい土方流喧嘩術だ。 蔓は思わずクスリと笑った。 「おうおう、余所見しちゃって、随分余裕のようだな」 永倉の竹刀が容赦なく、正確無比に蔓の脳天に振り下ろされた。 永倉の昔からの渾名は”ガム新”。 我武者羅に攻める剣は今も昔も変りない。 もっとも、昔の永倉のことなど蔓には知るよしもないのだが。 永倉の攻めの合間を縫うようにしてちょこちょこ別の竹刀がやってくる。 (こいつ、邪魔な松川から片付けるとするか) 蔓は襲ってきた島田の巨体を松川の方に受け流した。 目論見通り、島田と松川が同士討ちで共倒れとなった。
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