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「トト、いつもすまないね。ご飯の用意までしてもらって」
「さぁ、食べよう。折角トトが用意してくれたんだ。わしも飲み物位は用意したから。」
ボロいテーブルには色とりどりの果物が並ぶ。
ギシギシ鳴る椅子に腰かけ、話を絶やさない傀だけの声が響く。
「ボクこのあと町長さんの所に行って、この家に住んでいいかの許可もらってくるよ!まぁこんなボロ屋だしきっと大丈夫!」
「じゃあわしらは飲料水を補充してくるよ。井戸は一般開放しているだろうしね…」
朝食を終え、傀は何度も「大丈夫!」と両親に向け笑顔を作った。
町長に事情を説明し、傀はなんとか住まわせてもらえるよう全力を尽くす。
必要な食料などは全部自分でやる、街の援助も特にいらない。
なんなら多めに食料調達しても良い。
と、長丁場を覚悟していた。
が、意外なことに町長からは「構わんよ。どうせだれもいないんだ。」
その一言だけだった。
「すまんがこれから大事な客人が来る予定でな。用件が済んだならはずしてもらえるか?」
「あ・・・はい。ありがとうございます。」
拍子抜け。
幽霊騒動まであって、てっきりすぐ出ていけっていわれると思っていた傀は不思議がりながらも帰路につく。両親はまだ帰っていないようで、傀はせっせと片づけに精を出すのだった。
きっと帰ってくる。
一時的な、ただ飲料水を確保するだけの短い時間いなくなっただけなのだが、なぜか震える腕を無理矢理抑えつけた。
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