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「きゃあああああああっ!!」
「ヴオオオオオオオオオオオオオッ!!」
間を置いて雪姉の悲鳴と化け物の咆哮が同時に俺の耳を突き抜ける。
「っ!!」
俺も恐怖のあまり悲鳴を上げてしまいそうだったが、今は隣に雪姉がいる。俺がこいつから雪姉を守らなければならない。その気持ちがなんとか俺の心を保っていた。
幸い化け物と俺達の間には少しの距離がある。今から全力で走ればなんとな逃げきれるかもしれない!
「雪姉逃げよう!!」
俺は雪姉の手を引いて走ろうとするが、雪姉はへたっとその場に座り込んでしまう。
「こ、腰がっ!」
どうやら腰が抜けてしまったようだ。あんな化け物を前にしたんだ。腰が抜けても仕方が無いのかもしれない。ここで俺のとる選択肢は一つ。
「くそがっ!!」
なんとか気合いで雪姉の身体を抱き上げ、そのまま走り出す。こんなんだったら日頃から少しは鍛えておけばよかったな。
「ま、誠………」
雪姉が心配そうな目で俺をみる。自然とお姫様だっこの体勢になってしまったので目と目が合ってしまった。今の俺の顔は恐怖とそれによる涙と鼻水でかなり情けない顔になってるだろう。
「だ、大丈夫だ!!あんなやつすぐまける!!」
それを誤魔化すために根拠のない事を言ってみる。
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