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その言葉にカチンときて、思わず立ち止まる。
「何で俺の行動をお前が決めるんだよ」
俺の言葉にハルも立ち止まり、ゆっくりと振り返った。
晃の顔を見に来てしまった事は浅はかだったと反省しているけれど、自分の行動に口出しをされるのも、自分にとっての晃の存在を否定されるのも嫌だ。
「あの時言ったよな、晃とは……時間をかけても、元に戻りたいって」
「聞いたよ」
「覚えてるならそんな態度とるな、俺にとって何が必要で何が必要じゃないかを、お前が決めるな」
黙って自分を見つめるハルを正面から睨みつけ、来るなら来いと身構えていると、やがてハルが口を開いた。
「へぇ」
口元を引き上げながら、眉間にはくっきりと皺を刻んでいる。こいつがこんな顔をするなんて珍しい。怒らせたなと思ったけれど、今更引くつもりはなかった。
こちらよりも若干目線の高いハルを睨みつけ、次の言葉を待っていると、ハルは皺を寄せていた眉間を緩め、はあと溜息をひとつ吐いた。
「省吾は時々酷く鈍感で無神経で、自分勝手で残酷だ」
やけに冷静な発言がグサリと心臓に突き刺さる。
「な、なんだよ……」
「省吾は、晃の告白をどの位のものと認識している?」
「どの位って……」
「十年よりももっと長い時間、抑え続けていた想いを言葉にした晃の気持ちが、ほんの数ヶ月で何か変わると思っているのか」
晃の気持ち。
改めて考えて、何も言葉が出てこない自分にはっとした。
あの時は、ショックで、悲しくて、どうしてこんな事になったんだろうって、そんな気持ちでいっぱいだった。
戻りたいと思った。
晃を許そうと思った。
晃も戻りたいって言った。だからきっと戻れると思った。
その全部、自分の事ばかりで、晃の気持ちなんてひとつも考えていなかったことに……今まで、気付きもしなかった。
「俺は省吾を傷つけたあの男を許す気は一切ないけれど、どれ程の想いでいたか想像はできる。もとの関係に戻りたいと思う二人の思いは同じでも、その前に晃は途方もなく大きな気持ちを整理する必要がある。それは誰にも解決できない、どんなに時間がかかっても、晃にしか越えられないものだと思う」
静かな声で坦々と語られるハルの言葉を聞きながら、何も言えずにいる俺に更に追い討ちをかけるように、ハルは再び溜息をひとつついた。
「一人で乗り越えようとしている時に、会いたい人が会いにきてくれたら……俺はきっと抱きしめたくなる」
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