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「俺でよければ」
「何だよ香取まで!」
青木のブーイングが俺へと向けられたとき、背中越しから聞こえてきたハルの言葉。
「うんじゃあ青木、俺と組もうか。勿論優勝を狙うつもりでね」
笑顔だろうと、想像できる。
ハルの言葉に気を良くした様子の青木は、姉に頼んでくると席を立った。
「まったく……香取君もハルくんも、伊勢くんの我儘に付き合う事ないのに」
万優さんの言葉に伊勢さんは笑顔を返し、それから俺に向き直ると冗談ともとれる表情でこう言った。
「優勝したら賞品の高級あわびは香取にプレゼントするよ」
ん?
と首をかしげかけた俺の後ろで、今度はハルが口を開いた。
「伊勢さん、優勝はうちが貰いますよ? 高級あわびは渡しません」
バチバチと見えない火花を感じつつ、ハテと首をかしげる。
賞品の目玉は確か、あわびじゃなくて高級旅館の旅行券と副賞の金一封じゃなかったか。
少し考え、そもそも優勝自体どうでもいいという答えに落ち着いた俺は小さく溜息をつき、肩を落とした。
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