プロローグ

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 夏至が過ぎ、江戸の町は本格的な暑さを迎えていた。現代と違い涼を取る手段が発達していなかった江戸時代では暑い夏を過ごすのにはみんな苦労していた。特に今年の江戸の夏は何時になく猛暑だった。    立秋を迎えたこの日、そんな節入りとはうらはらに暑さはピークを向かえていた。大川(隅田川)に掛かる永大橋も陽炎で歪んで見える。昼の町を見回るため、ハチは汗だくになりながら永大橋の橋詰にいた。 「はぁ、はぁ、あぢぃぃ、こう暑いと仕事にならねえなあ」 日中の暑さが最高に達すると、陽炎は町中に立ち込めていた。 「うわぁ、町が歪んでみえる」 ハチはそう言いながら橋を渡り深川の町へと駆けていった。  
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