「それじゃあ…おやすみ」

22/24
6285人が本棚に入れています
本棚に追加
/465ページ
「四宮さんは、こちらの出身なんですよね?」 吊革に掴まって並んで立ちながら四宮さんに問いかける。 車窓の外は当たり前のように真っ暗で、時折光が、目の前を通り過ぎて行く。 「うん、そうだけど。 どうして?」 「話し方が…普通の標準語だし、イントネーションもそれっぽくないので、どうしてかな、と」 私の疑問に、四宮さんが「ああ」と破顔する。 「生まれはこっちなんだけど、子供の時親の仕事の都合で東京に引っ越したんだよね。 で、東京の大学出た後、こっちに戻って就職して。 それから事務所立ち上げたから、まあ仕事上は標準語。 まあでも、地元の人間と話すときはまた喋り方変わるよ」 「へぇ、そうなんですか」 四宮さんの経歴は、雑誌のインタビューなんかで目にする機会はたくさんあったが、そこには載っていない彼の過去が分かり、面白い。 なにより、雑誌やテレビに出ていた時は、どちらかと言うとストイックな感じで近寄り難いイメージだったので、実際話してみて気さくな印象なのも意外だった。
/465ページ

最初のコメントを投稿しよう!