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ちょっとでも気を抜けば、情けない事に、私の頭はさっき四宮さんの事務所で見聞きしたことに、支配されてしまう。
四宮さんと、実桜さんの関係、
昔の2人のやりとり、
彼氏、
写真の男、
『秘密にして下さいね』ーーーーーー
振り払うように、頭を左右に振る。
「高遠くんこそ、疲れてるでしょ?徹夜明けで打ち合わせだったんだから。
食べ終わったなら、寝たら?」
「ああ…うん。
そうさせてもらおうかな。
品川着く前に起こしてもらえる?」
「……どうしようかな、黙って降りちゃうかも」
冗談めかして言う私に、『あっ、ヒドイな』と笑う高遠くんは、いつもと変わりない。
やっぱり、考え過ぎだろうか。
「うそうそ。ちゃんと起こすから安心して」
そう言うと、心底安心したように頷いた。
「じゃあお言葉に甘えて」
お弁当を片付け、ガサゴソと荷物をまとめると、シートをゆっくりと倒す高遠くん。
もたれかかり、目を閉じる。
よっぽど疲れていたんだろう、高遠くんは程なくして静かに寝息を立て始めた。
左手は、私の手の甲を包んで。
ねぇ、ちょっとこれじゃ、私も動けないんですけど…。
苦笑して、私はお弁当の残りをあきらめた。
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