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 外地人の生徒が、なんの話をしたいのだろうか。タツオほどではないが、日乃元人でないというだけで、養成校のなかでも明確な差別があった。 「なんだよ、おれたち、これからいいことあるんだ。話なら、さっさとすませてくれよ」  スリランの後ろに班の全員の顔がそろっていた。 「おたがい照準をつけられている同士だ。はいってもいいか」  照準をつけられるは、進駐官の隠語でいじめや攻撃、虐待(ぎゃくたい)の対象として狙いをつけられるという意味だった。スリランの表情は真剣だ。タツオはうなずいていった。 「わかった。話をきかせてくれ」  7班の4人が入室すると、部屋の密度が一気に上昇した。ウルルク人が髪と肌に塗るツバキ油の匂(にお)いがかすかに流れてくる。 「遠足で毎年、怪我(けが)人や死亡者がでるのは、きみたちもよくわかっているな」  スリランは秘(ひそ)かな恐怖をもって語り始めた。
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