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授業の開始は午前8時半だ。将来の進駐官を育てる国の専門機関とはいえ、まだ生徒たちは15歳なので、授業の多くを占めるのは座学の一般教養だった。この高校特有のカリキュラムとして有名なのは、過去におこなわれた有名な会戦を学ぶ戦争世界史だった。3Dプロジェクターとインタラクティブに操作可能な戦闘データベースを備えた演習室は、養成校の誇りだった。
「各自、シミュレータを起動せよ」
月岡(つきおか)教官の低い声が、円形の演習室に響いた。ここは中央のアリーナをベンチが取り囲む階段教室で、一学年260名が収容可能である。
タツオは自分の前にあるパネルにふれた。最先端の機能を備えた演習室を寄贈した人物の名が刻まれた青銅のプレートが、机の右上にはめこまれている。逆島種雄(さかしまたねお)。タツオの祖父だった。
「今日の教材は、キリスト歴1529年からだ」
タツオは月岡先生の左手に目を奪われた。むきだしの金属の義手には、視線を集める磁石のような力がある。
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