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 【超甲種軍事機密】 このコンピュータはアクセス権を有せず。  タツオの頭のなかが真っ白になった。なぜ、ウルルクの戦いと父・靖雄の死は、こんなふうに隠されているのだろうか。氾・エウロペ連合軍に、日乃本皇軍が完膚(かんぷ)なきまでに打ち負かされたせいなのか。タツオは納得がいかなかった。敗北からでも学べることはあるはずだ。  父は誰の目から見ても、飛び切り優秀な指揮官だった。この養成高校も首席で卒業している。軍の中枢(ちゅうすう)の作戦部に勧誘されたが、実戦を経験したいといって、南方進駐軍に志願したのだ。誰がなにを隠しているのか。タツオの胸に黒い疑惑が浮かんだ。 「では、オスマン軍到着6日後に起こった最初の前哨(ぜんしょう)戦を見てみよう。ウィーン城壁東門から歩兵2500人が打って出て、オスマン軍を急襲、塹壕(ざんごう)を破壊し、最高司令官イブラヒム・パシャの捕獲まであと一歩というところまで迫った前哨戦だ」  高精細シミュレータでは、決死の城外戦を仕かけるオーストリア兵が狭い門から、急流の勢いで流れだしていった。
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