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 談話室は飲みものや軽食の自動販売機がおかれたリクリエーション用の大部屋だった。カラオケや故郷との3D電話をかけられる個室も12室用意されている。タツオがうんざりしていった。 「姫って、サイコのことか」 「そうだよ。東園寺のお嬢さま以外、ほかにどんな姫がいるんだよ。むこうの班は女子4名、うちは男子4名。いくら厳しい養成校でも合コンをしちゃいけないっていう規則はないだろ。戦争史の勉強会の名目でやるんだしさ」  クニは長髪を後ろで結んでいるが、一束(ひとたば)だけ額(ひたい)に流していた。それをかきあげるのが、得意のポーズらしい。 「とくにジョージは必ずきてくれよ。おまえといっしょの班でよかったよ。なぜか、おまえの名前をだすと、どの女子班も興味を示すんだよな。この調子なら卒業するまで、合コンにだけは困らないかも」  テルが体格のとおり重く低い声で抵抗した。テルはひとり学習机にむかっている。
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