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覚醒の予感
伸一は幻夢の呪縛の痺れたような余韻が、脳髄の一部に、残留しているように感じた。
痺れた状態と妙に研ぎ澄まされた感じが、融合した奇妙な感覚に、伸一は少し戸惑っている。
(此処はどこだろう? 最近よく同じ夢を見る……)
吐き気を伴った悪夢から舞い戻った途端に、また別の悪夢に取り捕まってもがき苦しむ感覚に、毎度のことながら閉口していた。
不思議な夢。
伸一は自分が少年のようでもあり、また青年そして自己とは違う人格に支配されているような感覚に当惑していた。
(自分は異常者なのか……)
自分を冷ややかに見つめている別の意識も感じられた。
幻想的な森。
蒼い二つの月が微弱に照射していた。
微風が頬を微かに撫でている。
体がまるで石像になったみたいに動かない。
点欠(体内のツボを突いて特定の身体機能を麻痺させる技)を施された状態に相似している。
5メートル先の左斜め前方に小柄な、横顔が可愛いらしい少女が立ちすくんでいた。
何かに抗うようなそぶりであった。
緑色の大きく耳が張り出した不気味な仮面が空中に浮遊し少し揺れている。
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