廃墟ビル

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廃墟ビル

 柔らかくウエーブした黒髪を、無造作に束ねている野球帽。  透明な程、透き通った肌に僅かに胸の膨らみを感じさせる白いセーター。  薄く閉じられた唇がほんのり朱い。  170cmの長身にジーパンがよく似合う。  男装しても美少年と見間違える程、尋常でない美しさである。  年齢は20歳だが17歳ぐらいにしか見えない。  朝は銀色の静かな雨に包まれていたのが嘘のように青空が見えている。  10月上旬の日曜日。  腕時計の針は13時10分前を指している。  立川駅ビルの七階の書店で肩を叩かれて振り返ると中学の二年先輩の別府明美であった。  クィックマッサージのアルバイトが終了し、これから拳法の道場へ行くので一緒に行こうと誘われた。  道場へは半年ぐらい体調不良を理由に休んでいる。  真紀は15歳~18歳まで道場に通い拳法二段の実力を持っていた。  道場を休んでいる本当の理由は実は拳法よりも剣法に魅了された為だ。 「何……じろじろ見てんのよ」  明美が微笑しながら、呟いた。 「変われば変わるものね」  感心したように、首を少し傾げ真紀が返答する。 「いかにも若奥様と言う感じで(元レディース総長)には見えないわ」  真紀も微笑を返しながら言葉を紡ぐ。 「そうよ人格革命したのよ」  明美が、真面目な顔して言う。   「旦那さんの為に変身を……、御馳走さま。」  真紀が悪戯っぼさと羨望の融合したような眼差しを明美に注ぎながら呟く。 「明美さん、今日は先約があるので、ごめんなさいね」  申し訳なさそうに言う。 「いいのよ、デートを優先しなさいね」  明美が諭すように呟く。  明美が後ろで、手を振りながら立ち去って行くのを見送りながら、暫く立ちすくんでいた。
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